ERP パッケージとカスタマイズについて

--- 1997年12月17日の日経産業新聞のトップ記事に関連して ---

 

 ERP パッケージの動きが、1997 12 17 日の日経産業新聞のトップ記事に「非製造業のコスト管理徹底」というタイトルで取り上げられました。

 その記事では、SAP ジャパンとウッドランド社が、金融機関・流通・サービス業などの非製造業に向けて、それぞれ 1998 年春に商品化する ERP パッケージについて述べています。

 その記事では、ABC (アクティビティ・ベースト・コスティング) という手法、すなわちこれまで部門ごとに大枠で割り振られていた金額を実際の業務活動に細分化し、それぞれの活動にどれくらいのコストがかかったかを計算する仕組みを ERP パッケージに取り込んでいくという動きを報じています。

 そういう ERP パッケージ商品の実例として、SAP ジャパンの R/3 のバージョンアップとウッドランド社の RRR (トリプルアール) の財務会計版について述べています。この他に、1998 1 20 日の日本経済新聞は、ウッドランド社が NTT および住友金属システム開発と組んで RRR の販売管理版をベースにして ERP パッケージの拡充を行うことを報じています。

 今後、ERP パッケージに関する記事が増えるものと予想されますので、その背景に何があるのかを探ることも意味があります。ここに取り上げた記事では ABC という仕組みがテーマでしたが、別の記事では別のキャッチフレーズが使われるかもしれません。そういうキャッチフレーズに目を向けるだけでなく、もっと深いところで起きている出来事にも注目してください。すなわち、そこには従来から存続する特注アプリ開発業界と新興の ERP パッケージ開発業界との攻防の図式があります。

 “特注アプリ開発業界”とか“ERP パッケージ開発業界”という言葉は、耳慣れないかもしれませんが、要するに企業向けの業務アプリの注文を受けて開発していた企業群 (業界) と、ERP パッケージの開発・販売に重点を置く企業群 (業界) のことを指しています。特注アプリ開発業界に属する企業は、業界という意識が希薄かもしれませんが、ERP パッケージ開発業界の各企業は業界意識を強くもっています。

 これらの業界の間の戦いは、大いに注目すべきです。なぜなら、特注アプリにするか ERP パッケージにするかによって、各ユーザ (企業) の情報化コストは大幅に違いますし、コンピュータをどの深さまで (あるいは広さまで) 活用できるのかという採算ラインにも大いに影響するからです。すなわちパッケージで済めば、情報化コストを節約できるので、その分だけコンピュータを深くまたは広く活用して効果を上げることができます。ですから、これらの業界の間の戦いは、コンピュータを利用するユーザ (企業) にとって大いに注目すべきことです。また、コンピュータメーカにとっても、ハードウェアの売上を左右する関心事だと思いますし、ましてや特注アプリ開発業界に属する企業にとっては言わずもがなです。

 話は外れますが、企業の情報部門にも ABC という仕組み導入することが是非とも必要だと思われます。どういうわけか、開発プロジェクトの各活動にかかる費用はドンブリ勘定であることが多いようで、不思議でなりません。ここを追求することは、ERP パッケージが有効かどうかを比較評価する上でも必須だといえるのではないでしょうか?

 話を元に戻しましょう。業界間の戦いの話です。

 SAP ジャパンは、新興の ERP パッケージ開発業界の中で第一人者とみなされています。そして、そこが販売するパッケージに対する批判として、次のようなことが言われています。

 グローバルスタンダードを志向するのはよいのだが、SAP ジャパンの ERP パッケージに合わせて仕事のやり方を変えることが必要になる。このためには、労働組合との調整なども必要になり、導入に時間がかかる。また、カスタマイズ費用が思った以上にかかってしまうので、特注アプリとして開発するのとコスト的にあまり変わらない。そもそも、日本の企業は、外国とくらべて商法や商習慣が異なるので、ドイツ (SAP ジャパンの親会社の国) で開発したパッケージがそのまま使用できるわけはない。カスタマイズが必要になる。

 こういう批判に対して、特注アプリとして ABC というような仕組みまで開発したら莫大なコストがかかってしまうでしょうと反論しているのが、ここで取り上げた記事だといえます。金融ビッグバンに照準を当てて、SAP ジャパンは国際的な経験がものをいう時代になったのだと言うでしょう。また、日本企業向けに ERP パッケージを開発するのだから、カスタマイズはそんなに多くはないはずだと、言うかもしれません。

 ウッドランド社は、新興の ERP パッケージ開発業界の中で最も新興だと見られていますが、実際には 10 年ほど前に“特注アプリ開発業”から 特注対応パッケージ業 ()”への転身を図っており、中小企業向けのパッケージを 5000 本ほど販売した実績をもつ中堅企業です。1997 年春からは RRR ファミリーという ERP パッケージの販売を開始して大中企業寄りにと展開を図ってきた会社です。

 ウッドランド社は、「カスタマイズはそう簡単にはなくならない」と主張することでしょう。業種・業務特性に加えて企業特性にも対応しなければならないのだから、カスタマイズは必須であると考えているのです。ですから ABC のような深い仕組みだけでなく、カスタマイズを簡単にする仕組みとして‘ソフトウェア部品のテクノロジー’を適用しています。ある意味では、カスタマイズしやすいパッケージによって大胆にも特注アプリを乗っ取ろうとしているかに見えるので、特注アプリ開発業界にとって恐い存在かもしれません。しかし、両業界の中庸を行く先駆者だと見る方が当たっています。なぜなら、特注アプリ開発業を営む企業は、ウッドランド社が実行したように、特注アプリ開発業から“特注対応パッケージ業 ()”へと歩み寄る道があるからです。

 こうした業界間の戦いと ERP パッケージ開発業界内の戦いの中で、ERP パッケージ開発業の各社は、どこかに特長を発揮して他社差別化を図ろうとしています。ですから、ABC のようなキャッチフレーズがいくつも登場することでしょう。しかし、何といっても、「カスタマイズ」が重要なキーワードであることだけは確かだといえます。カスタマイズしやすい ERP パッケージが提供されて次のようになったときのことを考えてみてください。

 特注アプリよりも深い機能を、安価に (もちろんカスタマイズ費用を含めても安価という意味です)、特注アプリと同様にお客様のお気にめすようにカスタマイズして提供されるようになったとしたら、...

 「カスタマイズしやすいかどうか、それが問題だ。」とハムレットでなくても言いたくなります。

 いずれにしても、両業界の戦いによって、長期的には、業界地図が大きく塗替えられ、とりわけ特注アプリ開発業は何らかの変更を余儀なくされるものと思われます。こういう目で今後の動きを見ていただくのがよいと思います。

 ERP パッケージのどこに特長を出すかは、各々が考えるべきことですが、弊社、アプリテック株式会社の主要製品 MANDALA を使って業務アプリのカスタマイズやメンテナンスを構造的に容易にするのも一つの方法です。ウッドランド社の RRR などのカスタマイズがしやすくなっている多くの理由は、MANDALA を使用しているためです。


 MANDALA やそれに絡むサービス お抱えツール屋サービスは、次の点に有効です。

  Visual Basic での業務アプリ開発の生産性を向上させるために

  カスタマイズしやすいパッケージを開発するために

 特に、特注アプリ開発業を営む方々には、早期に特注対応パッケージ業 ()へと歩み寄りを図るために MANDALA や弊社のプロジェクト支援サービス (AppliTech) を活用されることをお勧めいたします。


特注対応パッケージ

 特注アプリのように、顧客の特別な注文 (特注) にも対応する (対処できる) パッケージのこと。特注対応パッケージは、顧客の特別な注文に合わせるために、プログラムに手を入れることが必要になる (パラメタの指定では済まない)。もしも、このカスタマイズコストを低くおさえることができれば、特注アプリに比較して大幅なコストダウンになり、特注対応パッケージは、コスト意識の強い顧客に広く受け入れられることだろう。

 特注対応パッケージの例としては、SSS RRR ファミリーがある。これらは、部品カスタマイズによって、カスタマイズのコストを低くおさえている。

部品カスタマイズ

 ‘ソフトウェア部品のテクノロジー’を用いたアプリケーションプログラムに関するカスタマイズのこと。すなわち‘ホワイトボックス部品’に対するプログラムカスタマイズのこと。

 部品カスタマイズは、広義のプログラムカスタマイズに分類されるものだが、一般のプログラムカスタマイズに比べてその作業量を桁違いに小さくすることができる。なぜなら、‘ホワイトボックス部品’は、カスタマイズ作業を軽減する四つの性質 (検索性、局所性、手頃な大きさ、読みやすさ) を全て備えているからである。


MANDALA

 MANDALA は、Visual Basic による業務アプリの開発を支援するソフトウェアツールです。Windows 系 OS と Visual Basic 6.0 または 5.0 がインストールしてあるパソコンの上で動作させることができます。

 大手の保険会社信販会社自動車会社など開発者が100名を超える大規模プロジェクトの実績もあります。

 最新の第四世代言語のテクノロジーを採用している上に、更にウッドランド社が開発したデータ項目部品化テクノロジーを取り込んで発展させています。したがって、単に開発時の生産性だけでなく、カスタマイズやメンテナンスの生産性を飛躍的に向上させます。


AppliTech (プロジェクト支援サービス)

 AppliTech とは、Visual Basic アプリの開発プロジェクトをご支援するサービスです。この支援サービスの内容は、そのプロジェクト向けのアプリ開発に限定してソフトウェアツール MANDALA をお貸しすること、およびデータ項目指向のアプリ開発のノウハウを伝授することなどです。

 このサービス料は、Visual Basic による開発費の見積り額の 10%、またはソフトハウスの方々についてはアプリ開発の受注価格の 5% という破格の設定になっております。だだし、このサービス料の最低額は 100万円になっており、また見積り額や受注価格が妥当だと思われない場合には、弊社の見積り額をご提示させていただくことがあります。

 このサービスをご用命いただくことで、大抵の場合、開発費用を半分以下にすることができますから、非常にお得です。なお、弊社が効果を保証したプロジェクトについては、削減できたと思われる開発費用よりも支援サービス料の方が大きいとお客様が判断された場合には、その差額をお返しいたします。

お抱えツール屋 というサービス

 MANDALA そのものをお客様のアプリ開発に都合のよいようにカスタマイズすることで、あたかもお抱えのツール屋をもつかのごとく、アプリ開発をスムーズに進めることのできる "お抱えツール屋サービス" は、カスタマイズの実費が別途必要になりますが、大変に効果があります。第四世代言語を使用したアプリ開発で陥りがちな “ほんのちょっとしたことが実現できないために何とかしたいともがいて人食い鮫の世界に入り込んでしまう”という問題を解消するものです。


 AppliTech は、アプリテック株式会社の商標です。

 MANDALA は、アプリテック株式会社の商標として登録の申請を済ませています。

 SAP、R/3 は、SAP AG の登録商標です。


AppliTech Inc. (アプリテック株式会社)

AppliTech Inc. (アプリテック株式会社)

http://www.applitech.co.jp/

E-mail: NAC00245@nifty.ne.jp